シェフラー、ベルギーのスタートアップAerosint SAを買収し「付加製造技術」を強化

2023年10月26日 | Herzogenaurach / Yokohama

• シェフラーは米国企業Desktop MetalからAerosint SAを買収し、付加製造技術における市場ポジションを強化
• 「Schaeffler Aerosint SA」は、シェフラー特殊機械部門の拠点としてグループに統合
• 革新的なパウダーベッドレーザー方式（粉末床溶融結合）が付加製造のコスト効率を改善

世界的なモーション・テクノロジー企業であるシェフラーは、米国の革新的3DプリンターシステムメーカーであるDesktop MetalからベルギーのスタートアップAerosint SAを買収し、付加製造（積層造形）技術におけるノウハウを強化します。両社は当買収に関する取引の詳細について非公開とすることで合意しています。付加製造（アディティブ・マニュファクチャリング、AM）は、複雑な形状のコンポーネントを、従来の製造プロセスよりもシンプルに製造することが可能です。「インダストリー4.0」の成功の鍵となる付加製造は、原材料の消費量削減や、製造におけるエネルギー効率の向上、そしてより環境に優しい材料の選択を可能にするなど、サステナビリティの面でも多くの利点をもたらします。買収したスタートアップは名称を「Schaeffler Aerosint SA」に改め、シェフラー特殊機械部門の拠点としてグループに統合されます。

シェフラーAG最高執行責任者（COO）のアンドレアス・シックは今回の買収について次のようにコメントしています。「Schaeffler Aerosint SAは、同時に複数の金属材を造形するマルチマテリアル対応プリントを可能にする初の産業用ソリューションを提供します。このAerosintの技術に、シェフラーが有する高い産業化能力と長年にわたり積み重ねてきた革新的製造技術のノウハウを組み合わせることで、市場における圧倒的優位性を確保します。今回の買収は、インダストリー4.0の分野における金属付加製造プロセスの産業利用に向けた重要な布石になると考えています」。

新しい素材の組み合わせによる革新的な粉末被膜技術
パウダーベッドレーザー方式（粉末床溶融結合、L-PBF）は、治工具や試作品、少量生産品などのコンポーネントを製造する、革新性、効率性、持続可能性により優れたな方法です。特許を取得した選択的粉末堆積方式（Selective Powder Deposition, SPD）により、 Aerosintは 複数の材料を隣接して堆積させ、均一な層を作る技術を確立しています。材料の堆積は選択的で、適切な材料を必要な量だけ、必要な個所に堆積します。複数の材料粉末はそれぞれ分離した状態で投入され、粉末を供給するいわゆる「リコーター」（recoater）によって堆積されます。このリコーターがオフィス用プリンターのカートリッジのような働きをし、最大300μmの平面（X-Y方向）粉末解像度で3Dコンポーネントを「プリント」します。このSPD技術は既に市場に流通しており、パウダーベッドレーザー方式やバインダージェット方式などの付加製造プロセスや、間接造形方式とも併用することが可能です。シェフラー特殊機械部門は、この技術を複合材3Dプリントに統合する計画で、2024年の上市を予定しています。「この有力な未来の技術を統合することで、シェフラー特殊機械部門は卓越した製造能力を実現するパートナーとして、特に製造技術分野、医療技術分野のお客様に、より多様なシステムポートフォリオを提供することが可能になります」と、 シェフラー特殊機械部門シニアバイスプレジデントのベルント・ヴォレニックは説明しています。

2016年創業のAerosintは、本社がベルギー・エルスタルにある、従業員数19人の企業で、2021年にDesktop Metalに買収されています。Desktop Metalの創業者兼CEOであるリック・ファロップは、Aerosintの技術にはレーザーシステムに関する短期的なロードマップが策定されているため、シェフラーはAerosintの技術を早期に有効活用することが可能であるとの見解を示しており、次のように述べています。「シェフラーは高い技術力を有する国際的なパートナーであり、レーザーをベースとするシステムを活用したSPD技術を商業化する明確なロードマップを持っています。シェフラーと当社は今後も、Desktop Metalのバインダージェットシステムの技術を未来に活用する様々な可能性について協力して参ります」。 さらに、シェフラーとDesktop Metalは、ツールレス製造技術の分野を含め、複合材ソリューションにおける協力関係を継続する予定です。